バレエ好きな南帆です。
Kバレエ Spring tour 2019 カルメン
今日は渋谷文化村オーチャードホールでの
最終日でした。
熊川哲也さんの ドンホセと
矢内千夏さんの カルメン、堪能させていただきました。
”カルメン” はもともとオペラの作品で、
Kバレエカンパニー15周年の時に熊川哲也さんが
バレエの全幕として ”世界初演” として
発表した作品です。
音楽は有名な ハバネラとか、
闘牛士の音楽とかが使われていて、素敵なんだけど、
カルメン、という自由奔放な女が
ドンホセというまじめな青年をたぶらかして
さて、ことの顛末は・・・という物語です。
Kバレエ カルメン 熊川哲也 ドンホセを踊る
さて、街を歩いている人 10人に
インタビューして、
バレエと言えばだれを思い浮かべますか?
と言ったら、10人中9人は・・いや、7人かな。
”熊川哲也” って答えるんじゃないかと思います。
”バレエ” 自体を知らない人は除外して。
この、熊川哲也さんが、どれだけ、
”バレエダンサー”として優れていたかは
今はたやすく昔の動画も見れる時代なので、
是非、観ていただきたいんですけど。
彼の何がすごいかと言えば、
やっぱり、
テクニック。
それはとてつもなく早くて軸が正確な回転だったり、
高いジャンプだったり、です。
そして、それのコンビネーション。
息を飲むほどです。
そしてそれを可能にする、美しい筋肉とアンデオール
(足の外旋)
私は実は、熊川哲也さんの、一番好きなところは
アンデオールです。
すごく綺麗に開いている。だから、
5番ポジションがすごく綺麗に入っている。。。
そこから繰り出す、美しい回転とジャンプ、
身体のライン・・・。
この脚の外旋は、プロのバレエダンサーでも
苦労してトレーニングして身に着けるのだそうです。
やっぱり、5番が綺麗じゃないと、決まらない。
それが、アンソニーダウエルをして、
”彼の踊りは皆を幸せにする”
と言わしめた、彼の踊りなんです。
きちっと、こういう動きをして、こういう風に止まってね。
というのが心地いいんですね。。。
ただむやみに高く飛んだり、激しく回っているだけじゃないんです。
そんなこんなで、バレエと言えば、
彼の右に出るものはいませんでした。
そして彼はプリンシパルまで上り詰めた英国ロイヤルバレエ団を
退団し、自分のバレエ団を作り、自分を商品にして、
バレエ団を軌道に乗せ、大きいけがも乗り越えてきました。
そしてだんだん、彼は自分が表舞台には
出なくなってきていました。
自分が出なくても、”お客さんが来るバレエ団” を。
若者を育て、新しい作品を生み出してきました。
バレエダンサーって残酷で、
どんな人でも、やっぱり、時は平等に流れていく・・・。
私は正直言っちゃうと、
前回、熊川哲也さんが王子として出演された、白鳥の湖を観て、
”私はもう、熊川さんのクラシック全幕は封印かな・・・”
って思っちゃったんですね。
舞台に立っていたのが、恋をしたことのない王子様ではなく、
貫禄のある、経営者、に観えてしまったから(すみません)
あれ? と思って。
それから熊川さんが出られる全幕バレエは観てなかったんですけど。
この ”カルメン” はいわゆる、ピュアなクラシックバレエの
演目ではありません。
美人できまぐれな、奔放な女に、真面目な衛兵がはまって、
堕ちていく物語です。
熊川さんの演出や、踊りの振り付けも、ピュアなクラシックという
よりは、かなりどぎつさすれすれのアクションも入っています。
テクニックはありますが、
それを見せつけるシーンや、グランパドドゥなども
ありません。
どちらかというと演劇に近い。
ロミオとジュリエットのような。
(もちろん、難しい振り付けははいっていますが)
そんな物語に、熊川さんはドンホセを演じることを
決めたんですね。
自分のカンパニー20周年の演目に ”カルメン”。
ぱあっと明るい演目ではありません。
熊川さんがどうしても観たい、って天の声がして、
行ったんですけど・・・・。
すっかりやられてしまいました。
立っているだけでそこへ視線が釘付けになる存在感。
かつてのように、次々と技を繰り出すわけではないのだけれど、
随所で生み出される回転、ジャンプのキレ、身体のライン。
身体から溢れる情感。。。。
かつての熊川さんは、イケメンで、カッコイイ若者でした。
生意気で、テクニックの塊のお兄ちゃん。
それが今の舞台の上の ドンホセは。
なんて情けないんだろう。。。
こんなオンナに振り回されて・・・・。
こんな美しい清楚な婚約者を捨てて・・・・。
そんな、情けないドロドロなさま、
全然カッコよくない。
みっともないさま。
カルメンに足で蹴っ飛ばされても。
どんな姿も、こんな存在感の人、いるかとばかりに。
(経営者には見えませんでした 汗)
やっぱり、この人は バレエに選ばれた、
大スターなのだと思い知らされました。
確かに、
ピュアピュアなクラシックバレエは、もうやらないかも
しれないですね。
でも、こういう演目だったら。
たまには、全幕で登場してほしいと心から
思いました。
Kバレエ カルメン 矢内千夏 カルメンを踊る
そんな熊川さんをたぶらかす、カルメンを演じたのは、
つい数か月前にプリンシパルに昇格したばかりの
矢内千夏さん。
彼女はテクニックも表現も抜群ですから、
この大スター、熊川哲也さんを相手に、どんなカルメンを
演じてくれるのか楽しみにしていました。
今の私の思いです。
テクニックも、表情もばっちりで、素晴らしい!!
でも、
やっぱりまだ、ちょっと若かった
なんだろう、高校生の仲間内でも、ちょっと
ちゃきっとした、魔性の子、いたりするじゃないですか?
そんな感じに見えました。
私の中でやっぱりカルメンというと、
Kバレエの全幕初代カルメンとしてDVDに残っている
ロベルタマルケス、
それから、
いつか、バレエの饗宴で観た、下村由理恵さんの
なんとも色っぽいカルメン。
素晴らしく器用にいろいろこなせる千夏さん。
カルメンに関しては時間がもう少し必要かもしれません。
特に最初の登場場面とか、
カルメンとしての踊りをキメる部分とか。
でも、若いうちからなんでもかんでも完ぺきでなくてもいい。
逆に少し、安心してしまった。
伸びしろばっちり。 むしろこれに色気がついたら、
とてつもない バレエダンサーになるよね。
Kバレエカンパニー カルメン まとめ
その他に感じたことをいくつかあげてみます。
え~と、舞台構成について。
もう少し、ホセがカルメンに惹かれていくシーンを丁寧に
描いた方が、カルメンがいかに気まぐれで小悪魔的なのか
分かると思うんです・・・。
ロミジュリのように寝室のシーンがあるとか・・・・。
最初縄を解いてしまって、
酒場で誘惑されて・・・・
うん、もうちょっと、何か・・・・・・
個人的に、成田紗弥さんの ミカエラ がとても良かったです。
清楚で、丁寧で、美しい踊り。
新国立バレエの小野絢子さんにお化粧した顔が似てる!
彼女はプリンシパルソリストとして
入団した、注目株です。
5月末 ~ 6月初旬の シンデレラ では
シンデレラを演じてくれます。 楽しみです(^^♪
成田紗弥さんプロフィール
熊川さんはカーテンコールをいっぱい、いっぱいやってくれました。
そして、笑わしてくれました。
この ”カルメン” 熊川さんの回だけ、
終わりが少し、違っていました。
出待ちの時、ダンサーの方や矢内千夏さんにお聞きしましたが、
その時まで
どうなるか、誰も知らされていなかったそうです。。。
熊川哲也さんは
この演目も、このひとつ前の、ベートーベン 第九 も、
自分がもう少し体力的にがんばれば、
あの熊川哲也と同じ舞台に立ったんだ
っていう感動を与えることができるじゃない
っておっしゃったんです。
これは自分がスターということを知っていて、
遜らず、後輩のことを思いやる、
私たちファンにはたまらない、
彼らしいコメントですね。
さあ次はまた、どんな演目に出演してくれるのでしょうか。
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