Kバレエ「眠れる森の美女」を3公演観に行ってきました
バレエ好きな南帆です。
Kバレエの最新作、眠れる森の美女」は先日福岡の公演が
終了し、全公演が終わりました。クラシックバレエの王道として昔から伝わる
演出に改定があり、でもお馴染みの部分はきっちり残す、熊川さんの拘りが
たっぷりの作品となり、天皇皇后両陛下がいらした日があったり、話題の多い
ツアーとなりました。
それではもうネタバレ解禁! ということで、今回の新解釈、感想をいってみたいと思います。
新演出と舞台美術は、まさに芸術の極み! 物語の魅力をじっくりと探って
みましょう。
「眠れる森の美女」熊川さんのこだわりのあらすじ
まずここからですよね。
特番でも言われていたし、このポスターにも表れている、
”実は姫を〇したのは王子だった!” の衝撃。
栗山廉(くりやまれん)くんと岩井優花(いわいゆか)さん
それでは新アプローチのあらすじからおさらいをしてみましょう。
もし今後、再演されることがあってまだ観たことがない方がいらっしゃれば、
是非こちらでお勉強してからいらしてください。
バレエを観に行くときは、”ざっくりストーリーを頭に入れてから” でしたね??
バレエおたくとしましてはオリジナルストーリーの進行は頭に入っていますので、
そこからどう変わっているかを焦点にして観ました。
第一幕 第一場 オーロラ姫の誕生
フロレスタン王国の宮殿のダイニングルーム。
第一子の姫、オーロラが誕生し、そのお祝いの席に
親交の深い4つの国から、将来のお婿さん候補になる王子たち
をそれぞれ連れて王夫妻が招待されている。
それぞれの国には守護の妖精がついていて、一緒に登場し、
華やかな宴になるが、そこへ招待されずに激怒した隣国の
女王カラボスが乱入してくる。そして、”姫は美しく成長するが、
やがて命を落とすだろう”、という不吉な予言をする。
しかし、フロレスタン王国の守護妖精リラは王家に代々伝わる守護の
杖にカラボスを封じ込める。杖は森の奥深く封印され、王国には
平和が訪れる。
第一幕 第二場 森の中でのできごと
歳月が流れてオーロラ姫は美しく成長し、16歳の誕生日を迎えようとしている。
ある日花を摘みに森へ入り、花やカエル、ブルーバード等森の住人達と
楽しい時を過ごしていると、そこへ赤ずきんと狼が現れる。彼らは
カラボスに呪いをかけられた悪の手下で、オーロラは狼に襲われそうに
なる。 そこへデジレ王子が通りかかり、オーロラを救う。
実は16年前の誕生パーティに来ていた王子の一人が
デジレ王子だったんですよね。
そのあとそこに一人残ったデジレの元へ再び赤ずきんが来て
迷子になったと助けを求め、森の奥深くへ連れて行く。
そして赤ずきんが言うままそこにあったカラボスが閉じ込められた杖
を引き抜いて開け、カラボスを復活させてしまう。
カラボスは王子に呪いをかけ、悪の手下とし、オーロラを殺めるよう
黒いバラを渡す。
王子は姫を殺めるよう、呪いをかけられたんですね!
第二幕 第一場 オーロラの16歳の誕生日の宴
フロレスタン王国宮殿のダイニングルーム。
オーロラ姫の16歳の誕生日の宴が行われており、16年前に
招待された、4組の王夫妻が成長した王子たちをつれて
訪れている。今回の彼らはオーロラ姫の婚約者候補である。
その中にデジレ王子を見つけ、オーロラ姫は喜ぶが、森で会った彼と
別人のようで少し戸惑う。
そしてデジレはオーロラを惑わせ、ついには黒バラを彼女に渡して
オーロラ姫を死へ導いてしまう。
そこへカラボスが現れ、自分の思い通りになったとさんざん暴れて
去る。カラボスの手下がデジレ王子を連れ去る。
嘆き悲しむ皆を前にリラが現れ、「姫は死んだのではなく眠りに
ついただけなのです」と告げ魔法をかける。姫は棺に納められ、
森の奥に運ばれる。
第二幕 第二場 オーロラ姫の目覚め
カラボスによって森に連れてこられたデジレ王子。
呪いが次第に納まりオーロラを殺めてしまったことへの
後悔に苛まれる。 リラは王子に夢の中でオーロラの姿を見せ、
オーロラが目覚めるためには王子のキスが必要と話す。
デジレが目覚めたとき、リラは王子に剣を渡し、デジレは
その剣を持ってカラボスに決闘を挑み、討ち取り、
眠っているオーロラにキスをすると彼女は眠りから目覚め、
二人は固く結ばれる。
第三幕 オーロラ姫とデジレ王子の結婚式
オーロラとデジレ王子の結婚式の場。
隣国の王夫妻、そして森の住人達もお祝いに駆けつける。
ここでは宝石たちがきらびやかな舞を魅せ、そしてカラボスの
呪いの解けた赤ずきんもこれまでのことを詫び、狼と共に余興を
披露する。
最後に結ばれたデジレとオーロラが永遠の愛を誓いあう
グランパドドゥが披露される。
「眠れる森の美女」上演時間は?
眠れる森の美女はオリジナル作品もとてもボリュームが大きく、
全幕バレエの中でも上演時間が長いものの中の一つです。
今回のKバレエの新「眠れる森の美女」も比較的長い上演時間
となっています。
前回の上演の時は休憩が2回入っていましたが、今回は
1回になっていました。
25分間の休憩を挟んで
第二幕 45分
第三幕 30分
従来のあらすじとの違いとキャラクター設定など演出の巧妙さ
では僭越ながら従来のあらすじとの違いやキャラクター設定の妙を。
まず第一幕、第一場、から、
オーロラが産まれたときに4組の王夫妻が招待されていて、各国一人ずつ子供時代の王子が一緒。
その各国に守護の妖精がついている、という設定。
従来は普通の祝宴に、優しさや強さや歌声などをプレゼントする妖精がいる、
というのが王道でしたが、リラを除いて妖精たちが一人ずつ踊るシーンはなく、
私が個人的に好きな、カナリヤの精(吞気の精)とカーネーションの精(鷹揚の精)の音楽は
使われませんでした。熊川さんは後に現れるオーロラの婚約者の王子4人の素性を明らかに
されたかったようです。 子供時代の王子が踊るシーンがありました。
かわいそうに忘れられる存在ではあったようですが、彼女はれっきとした女王様だったんですね。
そしてこれは舞台を観た方にしかわからない演出ですが、特筆すべきなのが、
カラボスが大暴れした後に杖の中に封印されてしまうシーン。
これはすごいです。照明や人間の流れで実際カラボスが
本当にその場でイリュージョンのように消えてしまうのです。
当初はその話が大きく取り上げられたことはなかったですが、
素晴らしいので次行かれるときは必見です!
そして第二場。 ここが今回まったく新しく作られた熊川ワールドです。
ど森の住人たちと踊り戯れる。
・その後オーロラは赤ずきん、そして狼に襲われる。
・助けたデジレと恋に落ちるが、そのあとデジレは赤ずきんに導かれ、カラボスを復活させてしまい、
オーロラを死に導くよう呪いをかけられる。
従来はこの森の住人たちはディベルティスマンという、物語に何も関連性はないけれど
結婚式に招待されて踊りを披露するひとたち、という感じで独立していたのですが、
熊川さんはこの住人達の素性もはっきりさせています。そしてオリジナルでは結婚式で
踊られる踊りもここで踊られます。
からの音楽が使用されています。 バイオリンソロが美しい!踊りも美しい!
バレエのための曲ではなくても
こんなに美しく踊ることができるんですね ^^
オリジナルではカラボスが姫は針に刺されて死ぬ、という予言をしたため王様が
国民に尖ったものは使用を禁ずる!! というお触れを出すのですが、そのくだりは
ありません。 カラボスを復活させてしまったデジレが呪いをかけられてオーロラを殺めに
行くのですね。。。 怖い怖い。 今回オーロラを死に導いたのは王子だった、と
ありますが、呪いのせいだったのです。
ここでもやはり、一つ一つのキャラクターに意味を持たせている演出がとても新しいです。
第三幕は結婚式。
ここでは踊りとしては宝石がとても熊川さんらしい細かい振付の踊りを
踊ります。そして赤ずきんちゃんも呪いが解けて、余興を披露。
キャラクター設定としては大きく変わっているのが、この ”赤ずきんちゃん”
ですね。 この演出の中では鍵を握る存在です。
そして全体的に、振付がすごく細かくて技巧的なものばかり、さすが
熊川さんです。 そして、ダンサーの方々、お疲れ様です。
舞台美術やお衣装の魅力
舞台美術
一幕と三幕は宮廷のダイニングルームでのシーンだったのですが、
なんとも豪勢な造りでした(驚)
熊川さんが特番でも言っていた、舞台の奥行と絢爛さを表現した
支柱の凹凸! これは見事でしたね。
二幕ではこの支柱はそのままに、森のシーンになり、
明るいシーンでは ”太陽” が見え、暗いシーンでは ”月” が
現れました。
メイキングで熊川さんがデザイナーと
”客席から太陽が見えなくてもいいのか!!” と喧嘩していましたが、
物語の進行上、確実に客席から見える必要がありました。
善と悪、明と暗、がそれによって大きく状況の変化を表したんですね。
お衣装
もちろんすべて素敵だったのですが、特に印象に残ったのが
カラボスとブルーバードと赤ずきんのお衣装。 カラボスは脚の美しさが際立つ
タイツと、その上に被さるテイルのみのドレス。熊川さんが
メイキングでもっとスリットを入れて踊りやすく、とおっしゃっていた
通り大きな動きをするカラボスにぴったりですごく威圧感ありました。
ブルーバードは全身がブルーの羽で覆われていて、それでなくても
ジャンプのオンパレードの振り付けにあのお衣装は重くないのか・・・
と余計な心配をしてしまうくらい。 素晴らしく”鳥らしい” お衣装でした。
赤ずきんちゃんは今回怪しさと可愛さを両方演じるために最初は黒がかっていて
呪いが解けた後はいわゆる ”可愛い赤ずきんちゃん” のお衣装に変わっていました。
Kバレエ「眠れる森の美女」の感想
これは熊川さんも気合が入ってるな~~と思わざるをえない舞台でした。
宮殿の舞台美術とお衣装、そしてその舞台美術と彼独自の演出が紡ぎ出す
感動のストーリーは3回拝見しても毎回新しい発見があって、
見どころ満載です。
私が拝見したのは オーロラが飯島望未さんと岩井優花さんの回。
飯島さんはどんな役でも彼女の色に染めてしまう魅力を持っていて、
素晴らしい女優さんなのですが、この若い16歳のオーロラ姫を可憐に演じて
いらっしゃいました。 ポスターにもなっている岩井さんも、容姿は可憐
なのですが、とても強いテクニックを持っている方でした。
キーになっている赤ずきん役の山田夏生さんがとても怪しい魅力を
出していて、そして何といってもやられたのは 日髙世菜さんの
カラボス! 長い手足で舞台上を暴れまくっていました。彼女は
オーロラにもキャスティングされていたのですが、残念ながらそちらは
拝見できず。
でも、なんと、彼女のオーロラが映画化されるようです。
詳細が楽しみですね!
舞台美術と演出の妙技が交錯し、観客を圧倒する素晴らしい作品となっています。
これらの要素が一体となり、物語が観客の心に深く刻まれる瞬間。
是非、再演の折には舞台の奇跡を体験してみてください。
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